あの子の秘密
あの子との出会いは10年以上前
夜働いてた頃
先輩社員のおっさんに混ざって1人だけ借り物みたいなスーツの似合わない少年と呼んでもおかしくない男の子
隣に座ったはいいけど、お酒は飲まないし何も話さないし
なんとなく「どんな音楽聴くの?」て聞いたら急に饒舌になって
バンドでギタボやってる事や自分の機材の事や
別れ際、連絡先を聞いたら
「ぼく、彼女いるから」
て携帯番号でも携帯メールでもなく、PCのアドレスを書いて行った
それから、たまーに連絡取るようになって
ある日
「彼女が出来た」
て
「あれ?彼女いたんじゃないの?」
て聞いたらその彼女とは別れていたらしい
別に他意はなかったんだけど、その時口をついて出た言葉は
「好きだったのにな」
で
あの子の慌てようを今も思い出す
「だってねーちゃんはねーちゃんだし!姉弟は別れたりしないし!ねーちゃんはねーちゃんで大事だし!」
とか、諸々
ごめんね、困らせて
なんとなく言ってみたかったんだ、多分
でも君は姉として慕ってくれてるのはわかっていたから
彼女とか彼氏とかそういうのではない、愛情
眠れない夜、朝まで電話に付き合ってくれたね
「彼女ともこんなに電話しないぞ」
なんて言いながら
ある日、あたしが精神的にぼろぼろだった時
別にそれを言ったつもりはなかったのに
「明日スタジオあるからあんまり時間ないけど、会いに行くから」
て
「君忙しいんだから無理しなくていいよ。どうしたの急に」
て言っても
「いいから。◯時頃そっち行く。2時間くらいしかいられないけど」
て譲らず
本当に忙しいの知ってたけど、嬉しかった
で、翌日うちに来て
いきなり抱き締められて
「ちょwどうしたw彼女はw」
て言ったら
「いいから」
て
後から聞いたら
「あの時ああしてなかったら、ねーちゃんだめになってたろ」
てさ
気付いてたんだね、全部
だから、君には感謝してるよ
見た目に反して真面目な君には、きっと彼女を裏切る事は辛かったでしょう
それでもあたしを救ってくれようとした
実際救われたし
ありがとう
あれから沢山時間が経って、お互い状況が変わったりその中で恋人も変わったり
でも、相変わらずねーちゃんと慕ってくれる君が大切だよ
出会ってくれてありがとう
今あたしがこうしていられるのも、あの時君が救ってくれたおかげかもしれない