天国はスパンコール

思考と追憶の記録

彼女の事

大学に入学した時、彼女に出会った

彼女は3年生で、バンドでVo.をやっていて、触れたら折れてしまいそうな華奢な体型に似合わず男っぽい歌声で

いつも黒い服を着て、スカート姿はそういえばみた事がないかもしれない

あたしも彼女も、別にセクマイな訳ではなかったけれど、自然といつも一緒にいるようになっていた

待ち合わせて、学校の帰り道、よく手をつないで駅まで歩いた

彼女は男嫌いって言うんでもないし他校に憧れている男性もいて

でも「男に触れられるのは無理。手をつなぐなんて気持ち悪い」て言っていた

そんな彼女も今は結婚しているし、少しは男性への嫌悪感がなくなったんだろうか

あたしは、彼女から色々な事を学んだ気がする

煙草の吸い方や、食事の仕方

押し付けがましくではなく「◯◯は女の子なんだからそういうのはやめなさい」て

食事の席で煙草を吸う時は、相手に一言聞いてから吸うとか、本当に些細な事だけれど、出来ていなかった事

今のあたしのかなりの部分は彼女によって作られたと言っても過言はないと思う

左利きだった彼女は、自分の左側に人がいると手が当たったりするから、あたしはいつも彼女の右側にいて、その癖で今でも誰かと並んで歩いたり食事したりする時自然に右側にいってしまう

今でもたまに、メールをすると気が向いたら返してくれる彼女

「気が向いたら」

それがあたしが長く付き合えている相手の特徴かもしれない

何年も連絡取らなくても「久しぶり」なんて挨拶もなく「この前さ」なんて会話で始められる相手

何故かわからないけれど、最近彼女の事をよく思い出す

彼女の事というより当時の彼女を、かな

さっきも昨日か一昨日か送ったメールの返事がきたところだけれど

彼女に出会わなかったら、あたしはどんなだったんだろう

今まで付き合ったどんな男より、彼女から受けた影響が大きいから、彼女と出会わなかった自分を想像出来ない